スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【2011Book 17】 伊藤計劃 ”ハーモニー”

先日、ついに故・伊藤計劃氏のオリジナル著書「虐殺器官」を読み、深い感銘を受けたため、
その勢いを借りて、遺作となった「ハーモニー」を完読した。


実は、この「ハーモニー」と「虐殺器官」という2作品は、世界設定を共有している。
以下、ネタバレになるので注意。


「虐殺器官」では、主人公が人間の虐殺の意思を増幅する器官のコントロール方法を
最後に手に入れ、それをもって、アメリカを混沌に陥れるというラストで幕を閉じる。
その結果、世界規模の大惨事が起こり、人類は個人の健康を管理された新しい厚生社会を
確立させる。その社会が「ハーモニー」の舞台となっているのである。
知っていなくても十分に楽しめる2作ではあるが、伊藤ファンであれば、この設定に
倍の楽しみを感じることができるだろう。

さて、本作品の感想である。
本作品も、”伊藤節”とも呼べる繊細な内容、文章、表現を随所に光らせつつ、
集団殺人の犯人が不明であるサスペンスの要素。一方で、ナノマシンにより
個人の健康が全て開示されている近未来を描いたSF要素など、
エンターテイメントとしてもクオリティが高いことがよく分かる。
ただし、個人的には「虐殺器官」を既に読んでいたため、前作ほどのインパクトはなかった。
また、前作はアメリカの暗殺部隊に所属する主人公であったため、アクションも多かったが、
今作は調査員であり、女性ということもあり、アクションは少なかった。
こういった点からみても、僕の好みはどうしても「虐殺器官」になってしまう。

しかし、だからといってこの作品が素晴らしいことに、変わりはない。
こんな世界観、設定を一個人の頭の中で考えられるのかという驚愕の思いは
相変わらず消えない。
そして、事件がエンターテイメントとして成り立つほど、大事なのにも関わらず、
登場人物の内面を深くえぐる描写の繊細さは本当に見事としかいえない。
本当に伊藤氏の新作が読めなくて、残念である。

最後になるが、僕は伊藤氏のような芯を持ったクリエイターに強く惹かれる。
本作品では、最終的に人間が意志や意識を失い、一個人が社会のいちリソースと
なることで、旧ソ連などの共産圏が説いていた真の平等・平和が完成される。
しかし、そこには空虚さしかなく、そんな社会が人間にとって儚い幻想であることを
著者は示し、理想だけが先行し、大衆の思いを置き去りにした旧共産圏の姿勢を暗に
批判しているように感じる。(だからといって資本主義を称賛しているわけではない)
こういった”テーマ=クリエイターの芯の考え”が見え隠れする作品に僕は
惹かれる。そして、伊藤氏の作品もそんな作品であり、この作品に出会えた僕は
幸せだと思う。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

FC2カウンター
旬の一品!

プロフィール

tom85y

Author:tom85y
だいぶブログの記事もたまってきました。

ブログ内検索
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
エモ
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
あし@

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

レベルアップ中

blog-lvup.com
RSSリンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。